キャラクターデザイン

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キャラクターデザインとは、アニメ映画コンピューターゲームなどに登場する登場人物(キャラクター)の外見やイメージをデザインすること。略して「キャラデザ」ともいう。また、その業務の担当者のことをキャラクターデザイナーという。

アニメ・コンピューターゲーム[編集]

アニメコンピューターゲームにおけるキャラクターデザインとは、物語に登場する架空の人物(キャラクター)の人相・髪型・服装などの外見を、監督脚本家の設定を参考に新たにデザインする事である。監督が主人公を「冷徹な人物」と設定したならば、冷徹さを感じさせる人物をデザインしなければならない。かつてはアニメーターの業務の一部であったが、現在は独立したデザイン業務となっている。

オリジナルアニメの場合、全ての登場人物はオリジナル、つまりデザイナーの完全な創造物となる。デザイナーは全ての登場人物の外見をデザインするが、人物の正面だけではなく背面や側面・基本的な動作・喜怒哀楽の表情集・服装バリエーション・アクセサリーなどの小物類や、複数の登場人物が同一のフレーム内に登場するシーンの描画に必要な身長比較表なども作成する。

登場回数が多い主人公クラスのデザインは詳細に、雑魚キャラモブキャラと呼ばれる些細な人物のデザインは簡略かつ効率的に行われるのが普通である。長期間にわたり放送されているテレビアニメの場合、時間の経過に伴ってデザインが次第に変化してゆく事も見られる。

デザイナーの描いた登場人物のデザイン画は、メカニックやクリーチャーのデザイン画と共にまとめられて、設定資料集として多数コピーされ、作画に携わるスタッフに配布される。各原画マンは登場人物のデザインを参照しつつ、自分が描いた絵が我流にならないように時折チェックする必要がある。その為、表情集などが作画スタッフの作業机の一角に貼り出されている事は良く見かけられる。

また、この設定資料から部外秘の要素を取り除いたものが広報宣伝の素材や参考資料などとして、直接の広報担当者の他に、専門誌の編集部に配布されたり、インターネット上で一般向けに公開される事もある。

コンピュータゲームでは必要に応じて3Dモデルも作成される。

登場人物の服装や装飾のバリエーションを増やすためにはその都度それぞれを新たにデザインする必要があり、その為にはデザイナーへデザイン作業の発注が必要となる。つまり、その都度経費が発生するという事でもある。アニメに登場する人物の服装の種類が全編を通して限られていたり、一張羅である事も珍しくないのはこれに起因している。

映画[編集]

ウルトラシリーズ』、『仮面ライダーシリーズ』、『スーパー戦隊シリーズ』、『ゴジラ』といった特撮ヒーロー作品・特撮映画作品においてもキャラクターデザインという役職は存在しており、この場合は主にヒーローのデザインを行う担当者を意味してキャラクターデザイナーという職が設定される。

実写作品は役者が顔出しで演技するものであり、人相の設定は必要がないが、変身ヒーローの場合はマスクやコスチュームなどがデザインされる。また、専用武器などの装備類についてはメカ専門のデザイナーが担当する事が多いが、一部のものについては服装とのデザインの一貫性を持たせるためにキャラクターデザイナーが必要なデザインを行うこともある。

特撮テレビ番組などはそのマーチャンダイジングによって大部分の収益を稼ぎ出す構造になっており、そのメインスポンサーである玩具メーカーの社内もしくは関連デザイン会社の玩具デザイナーが企画段階から商品展開を見越した形で、メインのキャラクターや登場するメカニックなどのデザインを行う事が多い。

主な特撮キャラクターデザイナー[編集]

  • 成田亨『ウルトラマンシリーズ』

漫画・小説[編集]

新たに発表される小説本に添える挿絵として、イラストレーター漫画家などにより小説の登場人物の外見・服飾などがデザインされる事がある。この場合にはキャラクターデザインではなく、挿絵本文イラストといった呼称が使用される。

小説などを原作とする漫画化作品の場合、既存の人物イメージが薄い場合や自由度が高い場合は必要に応じて漫画化の担当者などが登場人物の外見をデザインする。挿絵などでイメージが存在する場合はそれを叩き台として漫画用のキャラクターがデザインされる。

この様な漫画・小説のキャラクターデザインの場合、アニメのような厳密な設定が作成されることは少ない。挿絵は一枚絵であり、漫画のコマ割りにしてもカメラアングルや人物動作は限定されたものになるからである。

特にライトノベル少女文学などでは、挿絵でデザインされたキャラクターの造形に小説家側が触発されて登場人物の性格や役割が変化していく事例も見られる。また、挿絵の効果で小説家の当初のプランとは異なる脇役キャラクターが思わぬ人気を博して、登場頻度が増加するなどという事も珍しくはない。

アニメと同様、長期間連載が続いている漫画の場合は長い連載の間にデザインが次第に変化してゆく事がある。『ケロロ軍曹』の様にそれすらをもネタにしてしまう作品も存在する。

デザインのリファイン[編集]

小説・漫画・ゲーム原作のアニメでは既存の人物イメージの修正作業もキャラクターデザインの一部である。すなわち漫画、小説の挿絵・イラストなどとして描かれた人物をアニメーションに適したデザインへと置き換える事である。

この場合、アニメのキャラクターデザインの担当者はキャラクターデザイン[1]、小説の挿絵・イラストを描いたイラストレーターキャラクター原案という役職名で区別されることが一般的である。また、メディアごとのプロットの相違などの必要に応じて追加のオリジナルキャラクターもデザインされる。さらにはテコ入れの為に原作者の了解を得た上で、途中でアニメオリジナルのキャラクターをデザインし、追加投入されることもある。

オリジナルアニメであっても、キャラクターデザインだけを漫画家、イラストレーターに発注した場合、デザイン画をアニメ用に修正する作業もキャラクターデザインの一部であるが、作画監督などが作業する場合は独立したキャラクターデザインの担当者は立てない。従ってクレジットはキャラクター原案と作画監督のみとなる。他方で、『クイーンズブレイド[2]の様に、元のキャラクターのデザイン担当者が多岐に渡る作品をアニメ化する場合には、作中の雰囲気の統一感を持たせまた作画スタッフに対する作画の目安とする意味でも、キャラクターデザイナーによるリファインは作品制作において重要かつ不可欠なものとなる。

一方、ゲームソフト原作のアニメなどではゲームソフトのキャラクターデザイナーがそのメーカーの社員スタッフである場合などに、ゲームソフト会社側のスタッフのクレジットについては原作の会社(ブランド)名で全て一括りにされ、キャラクター原案者としての個人名が出されない事もある。また、アニメの実制作までに当該ゲームソフトのキャラクターデザイナーがメーカーから退職している場合には、同様の扱いでキャラクター原案者が明記されない事が多い。

キャラクターの描き分け[編集]

登場人物同士は異なる人物であるから、個々の外見や容貌は異なる筈であり、それゆえ異なった人物としてデザインされる。すなわち一本のアニメには通常多数の人物が登場するが、それらはアニメの視聴者がそれぞれ別の人物であると認識可能な程度に外見を異なったものにする必要がある。

この人物を描き分ける能力は極めて高度な創造性が要求され、多くの業界関係者にとって困難な作業である。毎シーズン量産されるキャラクター群をそれぞれ異なる様にデザインするには高度なスキル・センスと豊富な作画の経験が必要となる。

結果的に人物の描き分けは、見た目で判別できる特徴、つまりはほくろや髪型といった人相以外の部分に頼ることになる。アニメに登場する独特な色使いの、奇怪なデザインの服装、重力制御が行えるが如く宙に浮く「アホ毛」などは、仕事に行き詰まったデザイナーの苦労の産物であるといえる。

また、このことは単独の作品にとどまらず、アニメ作品間の登場人物においても同様である。同じ人物による動画用のデザインだからといって異なるアニメの登場人物がたがいにそっくりであっては、やはり具合が悪く、この場合も描き分けが必要になる。とはいえ、デザイナーの個性が発揮される範囲での登場人物の相似は概ね許容されており、アニメ作品のそれぞれの魅力となっている。

なお、双子などの血縁やクローンパラレルワールド、またはそっくりさんなどの設定のため、登場人物のデザインが全く同一で描き分けの必要が無い場合でも、作劇の都合上、登場人物間に何らかの相違点を設定するのが一般的である。一例を挙げれば、『∀ガンダム』では、ディアナ・ソレルキエル・ハイムのハイライトの有無やと髪の微妙な色合い[3]によって判別する事が可能である。

クリーチャーデザイン[編集]

キャラクターデザインとは異なり、人間ではない登場キャラクターをデザインする作業を専門職的に行う者をクリーチャーデザインと呼ぶ事がある。

特撮やアニメにおいて、味方だが生物的に『ヒト』とは異なる存在であるもの、あるいは敵対する怪人怪獣、異形の生物といったもののデザインを行う。人間ではないとはいえメカデザインとも異なり、デザインの対象としては何らかの生物、またはそれに準ずるものが多い。また、同様の業務内容でモンスターデザインという呼称の使用も散見される。

キャラクターデザイナー[編集]

上述のとおり、キャラクターデザインの担当者はキャラクターデザイナーと呼ばれる。

アニメ[編集]

キャラクターデザイナーは現在のアニメの作画担当スタッフにとっては出世すごろくの「上がり」の一つとして認知されており、いつかは手掛ける事を夢みる重要な役職である。

現在では作品の制作スタッフの当該職名としてクレジットされるが、歴史的に見れば、1970年代までは専業である事はなく、基本的には作画職の範疇に含まれていた。1973年に放映された『ゼロテスター』のスタッフロールにて、日本では初めて箕輪宗廣に「キャラクターデザイン」のクレジットが与えられた。

アニメオリジナル作品の場合は造形も含めた全てを一からデザインするが、漫画原作がある作品や漫画家やイラストレーターが「キャラクター原案」を担当した作品においても、キャラクターデザイナーはアニメ制作にとって必要不可欠である。後者の場合、キャラクターデザイナーは集団制作であるアニメで重要な「多くのアニメーターが描写可能」な設定画の制作という、作品の出来不出来の一端を直接左右する重責を担う事になる。

近年ではアニメ業界でのキャリアを持たないイラストレーターや漫画家山田章博村田蓮爾草彅琢仁)が「キャラクターデザイン」としてクレジットされるケースも見られるが、この場合にはアニメ用設定画を描くアニメーターが別途「アニメーションキャラクターデザイン」などの役職名で表記される。業務内容自体は基本的に変わらない。

アニメーターからキャリアをスタートした者でも、キャラクターデザイナーとして描いた設定画やイラストレーションなどが高評価を得たことをきっかけにイラストレーターとしての仕事が増えてゆき、最終的にはイラストレーターが本業となった者も存在する(いのまたむつみ美樹本晴彦など)。

また、イラストレーターに転じた人物の中には、デザイナーとしての高評価からギャラ高騰に繋がったり、あるいはその様なイメージを抱かれるなどして、予算面の都合などもあってアニメ業界側から全く声が掛なくなり、結果的にはアニメ制作の直接の現場を事実上離れてイラストが主業になったという例もある。

代表的なアニメのキャラクターデザイナー[編集]

アニメ関係者一覧#キャラクターデザインも参照。

ゲームソフト[編集]

コンピュータゲーム産業でもロールプレイングゲーム恋愛シミュレーションゲームを中心に、人物の立ち絵や表情が描かれる作品ではキャラクターデザイナーが存在する。

ただし、これについては社員スタッフのグラフィック担当者が兼任することが比較的多いため、キャラクターデザイナーという肩書が付かないことも多い。外注スタッフによるキャラクターデザインも珍しくはないが、その場合、キャラクターデザイナーの大半は漫画家かイラストレーターで、本業アニメーターの者にゲーム業界が発注を行う事は、テレビアニメとのタイアップによる製品を別にすれば比較的少数派である。

スプライトなど、ゲーム中の表示物(キャラクタ)を制作する役職をキャラクターデザイナーと表記する事もあり、時には背景などの制作者を含む場合がある。

一方で、特にアダルトゲーム業界では原画担当者がキャラクターデザイナー職を兼任している事がほとんどであるため、趣味誌などでは「原画」という職名がキャラクターデザイナーと同義語になっている事が多く、「原画家」などと呼ばれる事も多い。

また、アダルトゲーム業界では、ヒット作を得てクリエイターとしての人気が沸騰したキャラクターデザイナーが制作会社や開発チームのブランドの人気や売り上げを一手に支える存在となる事もさして珍しいものではない。だが、小規模な開発チームが多いアダルトゲーム業界では、デザイナーやイラストレーターとしての独立志望など人気キャラクターデザイナーの動向が、時に開発チームやブランドを運営する企業自体の存亡さえ直接に左右してしまう事もある。

脚注[編集]

  1. 一部の作品ではアニメーションキャラクターデザインという役職名が使用される事がある。『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』など。
  2. アニメ化された作品名は『クイーンズブレイド 流浪の戦士』。
  3. キャラクター原案を手掛けた安田朗によれば、キエルは全キャラクター中最も美しいブロンドであるとしている。

関連項目[編集]

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