少女漫画

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少女漫画しょうじょまんが)とは、少女雑誌に掲載されるなど、主たる読者として若年の女性を想定した日本の漫画

概要[編集]

絵柄としては可愛らしい・綺麗な印象を与えるものが多い。作品世界の情趣を大切にして背景をリアルに描きこむことは避け、モノローグの多用、心象を具象化した背景、コマ割りなどを駆使し、人物の感情の流れを重視した演出に優れる[1] 。また、動きを表現したり視点を頻繁に変更したりする絵は比較的少ない。ただし現在の少女漫画は青年漫画や映画的手法の影響を大きく受けており、伝統的な少女漫画的表現にとどまらない表現手法も含んでいる。

少女漫画のジャンル[編集]

少女漫画では何らかの形で恋愛を扱ったものが主流で、ラブコメディ学園漫画、芸能界を描いた作品などは現在にいたるまで根強い人気がある。オカルト物・ホラー物・ミステリー物の伝統もあり、それを一ジャンルとした専門誌もある。低年齢向けのものでは魔法少女ものが多かった。

ギャグ漫画スポーツ漫画も古くからジャンルとして確立している。1970年代後半から1980年代にはSF漫画も流行した。1970年代の時点で少女漫画はあらゆるジャンルを開拓しつくしたという見解もある。

少女漫画の歴史[編集]

第二次世界大戦後、少女雑誌に連載された漫画が広く親しまれるようになる。1951年には上田としこが『ボクちゃん』を連載開始、1953年には手塚治虫が『リボンの騎士』を連載し、少女漫画にストーリー漫画を導入[2]、このころから少女漫画の人気が高まっていく。

1950年代後半から1960年代にかけては、宝塚歌劇の影響を受けたり、高橋真琴らの少女画からの影響を受け、少女漫画特有の装飾的な表現が発達した。人物背景に花を描きこむ、キャッチライトが多数入った睫毛の長い目などである。先行した少女小説の影響などもあって、美形の男性・男装の麗人などが登場し、華麗なストーリーを展開した。1950年代から1960年代の少女漫画はちばてつや松本零士など男性作家によって描かれていることが多かったが、当時の代表的な少女漫画雑誌各誌による、女性漫画家を育てる機運の高まりがあり、女性ストーリー作家第1号とされる水野英子らが早くから活躍し、少女漫画の手法の確立に貢献した。

1970年代に入り、少女漫画はその演出技法から、物語ジャンルへと広がり[1]萩尾望都竹宮惠子大島弓子山岸凉子といった24年組土田よしこなど、それまでに無いSFファンタジー、ナンセンスギャグ、少年同性愛を描く少女漫画家が出て、少女漫画の世界が一気に広がった。この点においては、柴田昌弘(サスペンス性・SF的要素・メカニック)、魔夜峰央(ミステリー・怪奇・耽美・ギャグ)、和田慎二(主にアクション)など少女漫画デビューの男性作家の貢献も大きい。1970年代後半は、少女漫画が男性読者にも注目された時期であり、少女漫画の影響を受けた絵柄や心理描写が少年漫画にも波及し始めた。反面少女漫画の枠に収まりきらない作品群になじめない層に「乙女ちっくマンガ」と呼ばれる作品群が支持され、[3]以後の等身大の女性を描く少女漫画の流れに繋がる。

1980年代には紡木たく吉田秋生といった漫画家が人気を博し、従来の少女漫画的な装飾的表現を簡略化する傾向が強まった。等身大の女性を丁寧に描く作家が多くなり、シンプルな背景にキャッチライトが入らない目の人物像を描く漫画家が増えた。それまで扱われてこなかった、性や職業をテーマにした作品が増え、少女漫画読者層が広がった[1] 。また、作家のキャリアが長くなってきていることもあり、レディースコミックが分化した。少年同士の恋愛を描いたボーイズラブ(やおい)も、少女漫画との読者層のズレがおこり、ジャンルとしての分化が果たされた。

また1980年代に入ると、少年漫画にも高橋留美子を皮切りに女性漫画家が進出、少女漫画の読者層であった少女たちも少年漫画や青年漫画を読むことが一般的になっていった。これによって、少女漫画の手法や少女漫画的なテーマが少年漫画や青年漫画の世界にも広く普及することになった。また、1986年に創刊されたヤングユーを切っ掛けに、1990年代に入ると少女漫画を卒業した女性の為のヤング・レディースというジャンルが生まれ分化し、前述の青年漫画にキャリアを積んだ少女漫画家自身の台頭もみられるようになった。

1990年代には心の問題を描く傾向がさらに顕著になり、かつての少女漫画で幸せを待つだけの女の子は共感を得られなくなり、自ら行動を起こす主人公像が求められるようになった。

少女漫画の現状[編集]

1980年代以降は、女性読者の少年漫画青年漫画への流失や、女性作家が少年漫画雑誌に連載することが多くなったことで、少女漫画界は衰退と対象年齢による細分化の傾向にある。

のだめカンタービレ』や『ハチミツとクローバー』、『君に届け』、『桜蘭高校ホスト部』など、少年漫画に見られない独特の魅力で男性読者や大人の読者を掴んでいる少女漫画も少数ながら存在する。特に矢沢あいの『NANA』は、男性読者や普段あまり漫画を読まない層を読者層に取り込み、2005年度オリコン1位(漫画部門男女)を獲得する等、少女漫画に光を与えた。同時期には『花より男子』がドラマ化され、単行本の売り上げが急増し少女漫画では一番売れた漫画となった。マスメディックス化が近年では多く、『NANA』等が成功例である。原状ではメディア展開に特化した女児向けの作品以外ではアニメーションよりも映画やドラマといった実写メディアの方が盛況であり、『のだめカンタービレ』に続いて、『ちびまる子ちゃん』までもドラマ化された。また後述の『きらりん☆レボリューション』はアニメの他に実写によるPVが製作されている。

近年は幼児小学生中学年以下)といった低年齢層に該当する女児を中心にターゲットにする漫画も『ミルモでポン!』、『きらりん☆レボリューション』の成功により市場を確立していた。ただしこれらはメディアミックス戦略の成功という趣があり、前述の作品が掲載されている「ちゃお」に関してはこれらの成功の影響で、以前と比べると低年齢向けのイメージが強くなっている[4]

しかし、その中間層である小学校高学年中学校1・2年生の少女をターゲットにする少女漫画(主に「りぼん」・「なかよし」・「ChuChu」に掲載されている作品)は、少女漫画の創生期から『美少女戦士セーラームーン』やママレード・ボーイ』などが大ヒットしていた1990年代末期までは少女漫画界の中心に君臨したにも関わらず、2000年代以降はヒット作がまばらな状態が続き、市場も大幅に縮小した。現状ではファンタジー設定やアニメ向けの展開は、小学校中学年前後の年齢層に達した少女にとっては幼稚と取られ、小学生の途中まで「ちゃお」や「小学館の学習雑誌」などを卒業した後は、「りぼん」や「なかよし」を素通りして、そのまま中高生向け雑誌で連載されている作品へ流出する事態が起きている。もっともこの項で語られる少女向けアニメのうち魔法少女ものは『アニメーションノートNo11』(誠文堂新光社)では「小学校就学前の女子児童を対象」としており、元々低年齢層向けだと思われていた事実が伺える。また前述の『花より男子』が1996年に放映されたアニメ版より、2005年に放映されたテレビドラマ版の方がよりヒットしていた事実は原状を象徴していると言える。

なお、中高生以上をターゲットにする人気作品には、小中学生以下をターゲットにする作品や少年漫画とは違い、掲載誌の売上シェアとの関連性がほとんど無く、雑誌単位の購買よりコミックスでの購買の方が多く、編集サイドにおいても単行本出版ペースを念頭に置いた掲載が成されている模様である。その反対に「ちゃお」など小学生を対象とする漫画は、掲載誌の売上シェアとの関連性が高く、雑誌ペースを念頭に置いた連載が成されている。

現在では青年漫画や少年漫画を女性が読むのはごく当たり前のことになっており、青年漫画・少年漫画でも女性読者を念頭に置いた作品作りがなされる場合がある。中には、メインターゲットを成年男子としながら少女漫画を自称する雑誌(「コミックエール!」など)も登場している。

他には、小学校高学年・中学生前後の少女が主な読者である雑誌(「少女コミック」など)での過激な性描写が問題となっている。

少女漫画家[編集]

当初は男性作家も多かったが、前述の少女漫画の変化により、ほぼ100パーセント女性により描かれるようになった[1]

出版社専属の作家が多数存在するが、この業界は一種のリーグ制を導入している(ホラー作品組と4コマ枠は完全な別枠とされている)。誰もが望むであろう連載組はわずか1~2割しかいない。短期連載組1割、その残りが読み切り組につくことになる。不人気なら専属契約を解除される厳しい世界である。少女漫画作品は他のジャンルに比べて、ストーリーの完結性が強く、計算された物語性が要求されるが、「売れる」と認められるのは(内容の質に拘わらず)連載が長く続く作品であり、短編に優れた作者にはまったく不利となる。この不安定な労働条件が、創作意欲の高い作家ほど早く力尽きるといった傾向を生み、日本の漫画界にとって大きな損失になっている。要出典1980年代以降、少女漫画家が青年漫画少年漫画に転向する例も多くみられる。


少女漫画雑誌[編集]

作品が掲載されている漫画雑誌。詳細は漫画雑誌#少女漫画誌を参照。

脚注[編集]

  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 アニメーションノートNo11(誠文堂新光社)2008年、ISBN 4416608330 P88「それはマンガの変化に似て」田中桂
  2. アニメーションノートNo11 P88「それはマンガの変化に似て」においては、ストーリーマンガの手法を取り入れたのは石ノ森章太郎であるとしている。
  3. 『20世紀少女マンガ天国』エンターブレインP16-17、ただし成長したリアルタイム世代の女性から、古いタイプの女性像の刷り込みなどの批判もあった。
  4. これらの作品は「ちゃお」の他には小学館の学習雑誌のうち、・中学年向けにあたる「小学一年生」から「小学四年生」まで掲載されたことがあり、事実低年齢向けである。

参考文献[編集]

  • 米澤嘉博『戦後少女マンガ史』、新評社、1980年1月、253ページ、全国書誌番号 81003669 。文庫版筑摩書房ちくま文庫、2007年8月8日、400ページ、ISBN 9784480423580
  • 『20世紀少女マンガ天国―懐かしの名作から最新ヒットまでこれ一冊で完全網羅!』、エンターブレイン、2001年、ISBN 9784757705067

関連項目[編集]

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