脳死

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脳死とは、どとうとしやが詳しく「脳全体の機能が不可逆的に停止したと判断された状態」と一応定義しておく。 問題は、脳の全部の機能も調べず、脳全体の機能が不可逆的に停止したと判定することである。 また、少数ではあるものの脳死と判定された患者が、臓器摘出寸前に、手足を動かし、手当ての末、意識回復をなしえた例がある。

定義[編集]

脳の機能に注目した定義[編集]

脳死(のうし、英:brain death)とは、ヒトの脳幹を含めた脳すべての機能が不可逆的に(回復不可能な段階まで)廃絶した状態のことである。 …… ウィキペディア日本語版「脳死」

脳死とは、呼吸・循環機能の調節や意識の伝達など、生きていくために必要な働きを司る脳幹を含む、脳全体の機能が失われた状態です …… 日本臓器移植ネットワーク-臓器移植解説集

前項に規定する『脳死した者の身体』とは、その身体から移植術に使用されるための臓器が摘出されることとなる者であって脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至ったと判定されたものの身体をいう。 …… 臓器の移植に関する法律第6条第2項

麻酔施行や神経抑制剤や筋弛緩薬の投与や低体温や代謝・内分泌障害での「脳死」と同様の状態は、「不可逆的」でないと考えられているので、効果があると判断されたら、脳死判定しないこととなっている。

脳が全部死んだことを強調する定義[編集]

脳死の状態(左図)では、大脳と小脳だけでなく、脳幹も死んでしまっています。 …… 東京大学医学部病院-組織バンク

なお、NHKニュースでも、同様の図を使って、脳死とは脳全部が死んだ状態と説明していた。

定義の問題点[編集]

  • 脳の機能に注目した「脳死」の定義では、視床下部のホルモン分泌や脳深部脳波などの脳の重要な機能を検査せずに、脳全体の機能が「不可逆的に停止」や「廃絶」と判定されているという現実と、相容れない。
  • 脳が全部死んだことを強調する「脳死」の定義では、脳細胞は栄養途絶などで死んだらすぐ自己融解するのに、「脳死」後しばらくの間かなりの脳細胞が自己融解せずに残っているとする研究データを、完全無視している。


三徴候死から脳死へ、そして脳死移植[編集]

三徴候死から「不可逆昏睡」そして脳死へ[編集]

自発呼吸停止と心臓停止と瞳孔散大の条件が整った三徴候死が、長い間死亡とされてきた。 近代医学の発達までは、自発呼吸停止と心臓停止で、死亡判定がなされてきた。 しかし、人工呼吸の発達と心臓マッサージの普及で、自発呼吸停止と心臓停止が満たされた状態、または三徴候死の状態が、数分間から一時間近く続いたとしても、意識回復例が出てきた。 不可逆的昏睡(irreversal coma)の概念が生まれ、容易に判定できる検査結果が一定の条件を満たしたら、脳が全部死んだ状態すなわち「脳死」状態と判断し、治療を打ち切るか意識回復のための処置を打ち切るという考えが、医療現場で普及してきた。

脳死と脳死移植[編集]

南アフリカのクリスチャン・バーナード Christiaan Bernard 医師が、「脳死」と判定された患者から、心臓を摘出し、心臓疾患の難病の患者に移植することを行った。

日本においては、札幌医科大学で心臓外科の和田寿郎教授が、水におぼれて意識不明となった青年について、脳波計がなく脳波を取れないはずなのに、自ら脳死判定を行い、臓器摘出を行ったのが最初である。後に、和田寿郎教授は、殺人罪で告発され、検察で嫌疑不十分の不起訴処分となる(「ウィキペディア「和田心臓移植事件」参照のこと)。

学説でいろいろ出てくるなかで、アメリカ合衆国では、「脳幹も含めた脳全体の機能が不可逆的に停止したと判定された状態」を「脳死」とする合意が、まとまりつつあり、それに基づき脳死判定基準ができて、「脳死の人からの臓器摘出」が合法化されてかなり普及している。

日本でも、1984年に筑波大学医学部付属病院で、岩崎洋治教授らの元、脳死と判定された患者からの臓器摘出が行われたが、後に、東京大学の本多勝紀医師や阿部知子医師が殺人罪で告発したが、嫌疑不十分の不起訴処分となることになる。 1997年7月16日に、「臓器の移植に関する法律」が制定された。

この法律に従って、1999年2月28日に、高知赤十字病院で、くも膜下出血から病状が悪化して中枢神経抑制薬のフェノバービタールとジアゼパムが処方された深昏睡の患者から、当該薬物の投与は脳死判定に影響しないとの判断の元、脳死と判定された後に、西山謹吾医師らによって、麻酔ガス処方のもと、合法的に臓器が摘出されることになった。これが、「臓器の移植に関する法律」制定後の、日本での脳死移植の最初の例である。発表された脳死判定の経過および臓器摘出について疑念を抱いている医者も含む市民により、日本弁護士連合会に「人権救済の申立」がなされ、「高知赤十字病院に対する日本弁護士連合会の勧告および要望」が、高知赤十字病院側に出される。ジアゼパムは中枢神経抑制薬としては、抑制効果が強いことが知られている。船橋市立医療センターではジアゼパムを処方された患者には、脳死判定ができないこととなっている。ある病院で「脳死」と判定できない患者からの、脳死移植がなされたという問題が浮き彫りになった(「高知赤十字病院に対する日本弁護士連合会の勧告および要望」参照のこと)。

その後、脳死移植は繰り返し行われ、国民の世論の元に定着しつつあるような観がある。2009年2月8日に、「臓器の移植に関する法律」に基づいた81例目の脳死移植が行われた。

脳死判定基準についての議論[編集]

「脳全体の機能が不可逆的に停止した」となるが、どの段階でそうすべきかは議論が分かれる。やはり、今後の医学の進歩で、「不可逆的に停止した」状態の一部のケースで「脳死状態」を離脱する可能性を否定できないとする意見が出てくる。「脳血流が残存して脳細胞がかなり生き残っていると推測されるケース」を除外すべしという意見があり、日本の立花隆ら有識者が強く主張しているが、スウェーデンやロシアでは、PETまたはSPECTで脳血流が途絶していることを確認のうえで脳死判定されている。2009年度の「臓器の移植に関する法律」の改正案の三つのうち一つが、脳血流検査および脳代謝検査を要求している。


脳死患者の状態[編集]

深昏睡-自発的な随意運動はないとされている[編集]

深昏睡であり、強い痛み刺激を加えても、顔をしかめたり手を払ったりという自発的な随意行動はないとされるが、脊髄反射の類はある。脳死判定直後、人工呼吸器のチューブを求められるがごとき自発的に体を動かす例が、アラン・ロッパーより Allan H. Ropper によって発見されて、ラザロ徴候 Lazarus sign とよばれ「脊髄自動反射」ということで説明されているが、脳幹の部分の延髄が関わっている可能性も指摘されている。また、麻酔なしでの臓器摘出の際、手足を動かすことがあることがわかり、念のため麻酔が施してから臓器摘出を行うのが実情である(ウィキペディア「ラザロ徴候」を参照のこと)。

瞳孔散大[編集]

眼に、強い光を当てても、瞳孔が散大したままである。

自発呼吸停止[編集]

脳死が疑われる患者には、人工呼吸器がつけられているので、法的脳死判定の際に確認されることとなる。

脳幹反射の停止[編集]

脳幹反射である、対光反射、角膜反射、毛様体脊髄反射、眼球頭反射、前庭反射、咽頭反射、咳反射が、一切ないものとされる。

「平坦脳波」[編集]

脳波計による図で、心電図のパルスや脳波計の内部雑音により完全平坦とはなっていないほぼ直線の波形で、頭皮上からの脳波が認められない。

ただし、「平坦脳波」となっていても、脳深部からの電気信号の脳深部脳波が確認される例もあるが、脳死の判定の際は頭皮上脳波だけを調べて判定することになっている。臓器提供病院である船橋市立医療センターの脳死判定では、脳深部脳波である鼻腔脳波を検査して検出された場合は脳死としない。

また、イギリスでは、大脳の機能も担保する脳幹毛様体も含めた脳幹の機能が不可逆的に停止していれば、脳波が出ても関係ないものとして、脳波は無視してもよいこととされる。

なお、薬物中毒でも、「平坦脳波」とされることもある。「平坦脳波」は、大脳皮質の機能停止の根拠にはなっていても、不可逆的停止の根拠にすら全然ならない。

聴性脳幹反応について[編集]

聴覚神経系を興奮させることによって得られる脳幹部での電位を頭皮上より記録したのが聴性脳幹反応である。蝸牛神経と脳幹部聴覚路由来の反応で音刺激から10msecの間に発生する6-7個の電位により成り立っている。この反応は、意識や睡眠状態の影響を受けにくく、極めて再現性のよい安定した波形が得られるとされる(岡山大学医学部のサイトの「聴性脳幹反応」の説明を参照)。

日本のほとんどの臓器摘出病院では、聴性脳幹反応を調べ、認められないことを確認する。脳死判定の際、残りの基準は認めても、3割の患者に聴性脳幹反応が認められた例もある。

意識は絶対ないとされているが[編集]

意識が一切ないとされている深昏睡の場合でも、外の会話を知覚し、意識回復時に再現することがたまにあり、深昏睡の時でも「内的意識」が存在していたとされる。心肺停止状態と判定された患者が意識回復したさい「ご臨終です」とかの判定状況を再現できる場合がある。「脳死」の患者に、「内的意識」は絶対ないはずであった。しかし、脳死と判定された患者の意識回復例では、脳死と判定されたときの会話を聞いて再現している。また、家族が来ているときに脳死患者でも血圧が上がることもある。

体温、汗、涙[編集]

体温は、長時間正常である場合が多い。脳死の患者に麻酔なしで、メスを入れた際、大粒の汗が出てきたビデオがNHKで放映されていた。また、脳死の人に声をかけたら涙を流したという脳外科医師の証言もある。これは、「情動の座」たる視床下部の機能がまだ失われてないとする状況証拠となりうる。

視床下部のホルモン分泌[編集]

人は、怒りや不安、快不快などの、情動があるが、それに際して、視床下部からホルモンが分泌されている。また、空腹や満腹、生殖本能、目覚め、には、視床下部の機能と密接に関係するとされる。脳死と判定された患者において、視床下部からホルモンが分泌されたという報告例が、広島大学の魚住徹教授らから寄せられている。新潟大学の生田房弘教授から、脳死判定後4日で剖検例約4割の患者の視床下部の細胞が生き残っていた報告がある。

血圧の変化[編集]

臓器摘出直前のメスを入れた際、血圧が上がることがよくある。刺激により、血圧が上下することはよくある。1999年2月の高知赤十字病院の脳死判定後の臓器摘出の際、血圧が 120mmhg から 150mmhg に上昇した。


2008年現在の日本での脳死判定[編集]

日本では、厚生省脳死判定基準に基づいて行われる

法的脳死判定マニュアルから[編集]

  • Ⅰ 脳死と判定するための必須条件
    • (1) 前提条件を完全に満たすこと。
    • (2) 除外例を確実に除外すること。
    • (3) 生命徴候を確認すること。
    • (4) 脳死と判定するための必須項目(Ⅴに記述)の検査結果が全て判定基準と一致していること。
  • →Ⅰ(1)~(3)の条件が満たされない場合は脳死判定を開始しない。
    (4)での検査結果が判定基準と一致しない場合はその時点で脳死判定を中止する。
  • Ⅱ 前提条件
    • (1) 器質的脳障害により深昏睡及び無呼吸を来している症例
    • (2) 原疾患が確実に診断されている症例
    • (3) 現在行いうる全ての適切な治療をもってしても回復の可能性が全くないと判断される症例
  • Ⅲ 除外例
    • [1] 脳死と類似した状態になりうる症例
      • (1) 急性薬物中毒
        • ① 周囲からの聞き取り、経過、臨床所見などで薬物中毒により深昏睡及び無呼吸を生じたと疑われる場合は脳死判定から除外する。
        • ② 可能ならば薬物の血中濃度の測定を行い判断する。ただし薬物の半減期の個人差は大きい事を考慮する
      • [備考] 急性薬物中毒ではないが、脳死判定に影響を与えうる薬物が投与されてい る場合
        • ① 原因、経過、病体を勘案した総合的判断が必要である。
        • ② 可能ならば薬物の血中濃度の測定を行い判断する。
        • ③ 薬物の血中濃度の測定ができない場合は、当該薬物の有効時間を見計らって脳死判定を行うことが望ましい。
      • →問題となりうる薬物
      • ●中枢神経作用薬
        • 静脈麻酔薬
        • 鎮静薬
        • 鎮痛薬
        • 向精神薬
        • 抗てんかん薬
      • ●筋弛緩薬―刺激装置で神経刺激を行い筋収縮が起これば筋弛緩薬の影響を除外できる。
      • (2) 低体温:直腸温、食道温等の深部温が32℃以下
      • (3) 代謝・内分泌障害
        • ① 肝性脳症
        • ② 非ケトン性高血糖性脳症
        • ③ 尿毒症性脳症
        • ④ その他
    • [2] 15歳未満の小児
      • (臓器の移植に関する法律施行規則(平成9年厚生省令78号)では医学的観点から6歳未満の患者を除外しているが、法的な本人の意志確認の観点から15歳未満の患者の法的脳死判定は行わない)
    • [3] 知的障害者等、本人の意思表示が有効でないと思われる症例(当面、法的脳死判定は見合わせる)
      • 注:脳幹反射検査、無呼吸テストの実施が不可能あるいは極めて困難とあらかじめ判断される症例においては、当面脳死判定を見合わせる。
  • Ⅳ 生命徴候の確認
    • (1) 体温
      • 直腸温、食道温等の深部温が32℃以下でないこと。
    • (2) 血圧
      • 収縮期血圧が90mmHg以上であること。
    • (3) 心拍、心電図等の確認
      • 重篤な不整脈がないこと。
  • Ⅴ 脳死と判定するための必須項目
    • 法的脳死判定に先立って、臨床的に脳死と判断する場合には(1)~(4)、法的脳死判定には(1)~(5)の確認が必要である。
    • (1) 深昏睡 ジャパン・コーマ・スケール(JCS)300 グラスゴー・コーマ・スケール(GCS)3
    • (2) 両側瞳孔径4mm以上、瞳孔固定
    • (3) 脳幹反射の消失[以下①から⑦)の全てを確認する]
      • ① 対光反射の消失
      • ② 角膜反射の消失
      • ③ 毛様脊髄反射の消失
      • ④ 眼球頭反射の消失
      • ⑤ 前庭反射の消失
      • ⑥ 咽頭反射の消失
      • ⑦ 咳反射の消失
    • (4) 平坦脳波
      • →聴性脳幹誘発反応の消失:必須条件ではないが確認することが望ましい。
    • (5) 自発呼吸の消失
  • Ⅵ 法的脳死判定における観察時間
    • 第1回目の脳死判定が終了した時点から6時間以上を経過した時点で、第2回脳死判定を開始する。
    • なお、原因、経過を勘案して、必要な場合は更に観察時間を延長する。
  • Ⅶ 脳死判定時刻
    • 第2回目の脳死判定終了時刻をもって脳死と判定する。
  • Ⅷ 脳死判定医
    • (1) 倫理委員会等において選任され、下記の条件を全て備えている医師が行う。
      • ① 脳神経外科医、神経内科医、救急医又は麻酔・蘇生科・集中治療医で学会専門医又は学会認定医の資格を持つ者
      • ② 脳死判定に関し豊富な経験を有する者
      • ③ 臓器移植に関わらない者
    • (2) 判定は2名以上で行う。
    • (3) 判定医の内少なくとも1名は、第1回目、第2回目の判定を継続して行う。
  • Ⅹ 脳死判定の順序
    • 1. 前提条件の確認
    • 2. 除外例の確認
    • 3. 生命徴候の確認
    • 4. 深昏睡の確認
    • 5. 瞳孔散大、固定の確認
    • 6. 脳幹反射消失の確認
    • 7. 平坦脳波の確認
      • →聴性脳幹誘発反応の消失:必須条件ではないが確認することが望ましい。
      • →5,6,7の相互の順序は問わない。
    • 8. 自発呼吸消失の確認は5,6,7 の後に実施


脳死と判定された人の意識回復例[編集]

2007年、ザック・ダンラップ 青年のケース[編集]

「脳死の人は、二度と回復しない」とされてきたが、アメリカ合衆国で脳死と判定された21歳のザック・ダンラップ Zack Dunlap 青年が臓器摘出手術直前に手足を動かし、最終的に意識を取り戻したことが、2007年にあった。

オクラホマ州在住のザック・ダンラップ青年は、11月17日午後7時30分頃に四輪バイクを運転中に交通事故に遭い、90キロメートル離れたテキサス州の町ウィチタフォールにあるユナイテッドリージョナル病院に搬送された。頭蓋骨複雑骨折で重篤状態が続き、11月19日午前11時10分にレオ・マーサー医師が、脳血流検査と脳死判定基準により、ザック青年が脳死であると判定した。臓器提供の意思表示が示された運転免許証を患者が所持していたということで、臓器摘出手術に向けて準備が進められる。いとこの看護師がポケットナイフでかかとから足先までに引っ掻いたときザック青年の足が上に動き、手の爪の下に痛み刺激を与えると手を強く動かした。マーサー医師が来て手を自発的に動かすことを確認し、摘出手術の準備が中止された。救命処置の結果、11月24日に目を開き、11月26日自発呼吸の回復が確認され人工呼吸器のチューブがはずされ。その後12月2日に言葉を話すまでに回復して、翌年2008年1月6日に退院した。

なお、ザック青年は、脳死と判断したときの医師の言葉を聞いて記憶していた。


参考文献[編集]


外部リンク[編集]