音楽配信

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音楽配信(おんがくはいしん)とは、インターネットを通じて楽曲を配信することである。「デジタル音楽販売」「オンライン(音楽)配信」なども同じ意味に使われる。 一曲・アルバム毎にダウンロードする形式や、定額制のストリーミングによる聴き放題の形式がある。

特徴[編集]

音楽配信を利用すると、1曲だけ欲しい場合にCDをアルバムごと購入せずに済んだり、CDが廃盤になるなどで入手困難な楽曲を入手できる可能性があるところやCDの品切れが発生しないところがメリットである。

DRMを使用した有料音楽配信の場合、購入する楽曲に「ポータブルプレーヤーへの転送回数制限」「CDへの書き込み回数制限」「バックアップの可否」などの条件が設定される。ただし、デジタルオーディオプレーヤーのヘッドホン端子から録音機器にコピーした場合と、一度CD-DAにコピーすれば、CDからリッピング・エンコードする分には制限が無意味になってしまう。ただし、殆どの音楽配信は非可逆圧縮を伸長しているため、音質は劣化する。

有料音楽配信に使われるフォーマットは、iTunes StoreやmoraではAAC、他のサービスではWMAやATRAC3が多い。これらは非可逆圧縮であり音質の劣化が発生するため、可逆圧縮(ロスレス)フォーマットを用いたり、サンプリング周波数を上げたり、一部のサイトは、非圧縮のAIFFWAVなどを採用したりして、CDよりも高音質を実現したハイレゾリューションオーディオによる配信も行っている。

有料音楽配信の価格は、1曲あたり100〜300が一般的である。iTunes Music Storeが2005年日本でサービスを開始した際、競合サービスに比べて低価格であり、他社が対抗値下げをしたことがあった。CDを購入するより割安だが、レンタルCDに比べれば高価で制限が多い。

人気アーティストがCD発売よりも早く楽曲を配信したり、音楽配信のみでCD発売されない楽曲をリリースするなど商業的戦略にも活用されている反面、デジタルオーディオプレーヤーを販売するメーカーを親会社に持つレコード会社が、戦略的にライバルの音楽配信サービスに楽曲をリリースしないといった問題も多い[1]

歴史[編集]

黎明期[編集]

1998年頃までにパーソナルコンピュータの世界でMP3フォーマットが広く普及し、インターネットを通じて音声ファイルを手軽に配布することが可能になった。レコード契約を持たない独立系ミュージシャンアマチュアミュージシャンなどが、作品をMP3ファイルで配布するケースも現れた。また、MP3再生に対応したデジタルオーディオプレーヤー(DAP)クリエイティブメディアRioなどの海外メーカーが市販化したことで、日本では手持ちの音楽CDをPCのRealJukeboxなどでリッピングし、DAPのメモリーにコピーして楽しむ形態が流入し始める。

しかしながら、MP3フォーマットは著作権保護の仕組みを持たないため無限にコピーを作成することが可能で、コンパクトディスクからエンコードしたMP3ファイルが海賊版としてネット上で流通することが問題になった。

1999年に入り、欧米では著名アーティストの楽曲を有料配信するウェブサイトも登場し始めたものの、海賊版への懸念は残る形であった。

同年にソニーOpenMGマイクロソフトWindows Media AudioDRMといった音楽ファイルのデジタル著作権管理(DRM)技術が実用化され、記憶媒体側にコピープロテクト機能を付与したID付きスマートメディアSDメモリーカードマジックゲートメモリースティックが登場したことで、配信楽曲の違法コピーの懸念がある程度払拭されるようになると、日本では後述の通りレコード会社直営による音楽配信サイトが開始され、インフラが構築したことになる。

普及期[編集]

2000年代以降、Napsterなどのファイル共有ソフトブロードバンドの普及で世界規模で海賊版問題が急速に拡大し、日本においても類似ソフトの開発者らが逮捕された事で脚光を浴びることになる。米国で海賊版全盛の状況に歯止めをかけるのは、全米レコード協会によるP2Pソフトウェアメーカー及び利用者への訴訟攻勢や、2003年に登場したアップルコンピュータが米国で開始したiTunes Music Store(現iTunes Store)であった。アップル社はiPodの人気を追い風にし、ほとんど普及していなかった有料音楽配信を大きな収益を挙げるまでに引き上げた。MSNYahoo!RealNetworksといった米国の大手インターネット企業も本国では追随し、大手レコード会社も独自の音楽配信事業を立ち上げた。

2005年上半期には、世界のレコード業界全体の売り上げのうち6%をデジタル販売が占め、前年の3倍超に急増した[2]

2007年2月、アップルのスティーブ・ジョブズCEO(当時)がレコード会社に対してデジタル著作権管理(DRM)を撤廃するよう呼びかけた。その背景にはコピーコントロールCDを含む音楽複製防止に消費者の嫌悪が広がったこと、アップルが採用するFairPlayが他社の機器・ソフトで利用できず消費者を囲い込んでいることへの批判がある。これを受けてEMIはiTunes Store上でDRMなしの楽曲を配信することを決定し、2007年5月30日よりDRMフリーの楽曲を販売を開始した。

日本での動向[編集]

1996年小室哲哉が自身のウェブサイト「Planet TK」で、NTTの音楽配信技術「Twin VQ」を使用した音楽配信の実験を開始した。MP3と比べて高い圧縮比率を持ち著作権保護の仕組みも備わった技術であったが、普及には至っていない。Twin VQの技術の一部はMPEG-4に取り入れられている。

日本での音楽配信は、ベンチャービジネス原盤権を保有するレコード会社(主にインディーズ・中堅)や音楽出版社の許諾を得た楽曲を配信する動きが目立ち、ネットバブル前夜でもあったため注目を浴びていた。その代表格はリキッド・オーディオ・ジャパンである。

しかしながら、デジタル著作権保護(レーベルゲート方式)の新技術が盛り込まれたDAPとして同年12月にソニーがNW-MS7を発売し、ソニー・ミュージックエンタテインメント (日本)が国内大手レコード会社としては初の直営による音楽配信サイト「bitmusic」の運営を開始。これに複数の国内大手レコード会社が運営モデルや配信フォーマット(レーベルゲート方式)を追従したことで、2001年には前者のような形態の有料音楽配信サイトは一端姿を消すことになった。

なお、国内大手レコード会社の配信サイトが参入したデジタル著作権管理対応フォーマットは、レーベルゲート方式の他、MP3(Info Bind、東芝が採用)・AACSD-Audio)・Windows Media AudioDRMがある。MP3での配信は2001年までに消滅したが、2011年現在はレーベルゲート方式(mora)がウォークマンおよびauKDDI沖縄セルラー電話連合)のLISMO対応機種、AAC(iTunes Storeと着うたサイト)がiPodパナソニックのDAP・着うたと、機器を換えることで同一ファイルの転送・再生が不可となる規格争い状態が続いている。ソニー・ミュージックエンタテインメント所属アーティストはiTunes Storeではコンテンツを供給せず、Appleユーザーにとっては不利益な様相を呈している。なお、著作権保護を付けないファイルについては複数のフォーマットで再生に対応している機種もある。また、WMA-DRMについては日本メーカー製のDAP機種は少数派となっている(東芝のGigabeatICレコーダー オリンパス・ボイストレックシリーズなど)。2006年以降に発売されたNTTドコモのFOMA端末の多くは2代目Napster(うた・ホーダイ)の関係もあり対応としていたが、2010年3月にサービスが廃止されたことでWMA-DRMを非対応とした機種が増加している。

携帯電話向け音楽配信[編集]

パソコンデジタルオーディオプレーヤーで聞く音楽配信とは別に広く普及したのが携帯電話を使った音楽配信である。2003年後半以降、携帯電話の「着うた」が展開されると、コンテンツプロバイダが権利者から借り受けた音源を一曲単位でコンテンツ販売する「着うたサイト」のビジネスが急速に規模を拡大することになる。

なお、モバイル機器での音楽配信としてはPHS端末を使用したものが大きく先行しており、2000年11月にDDIポケットfeel H"のサービス開始と同時に「SoundMarket」を開始、2001年1月にドコモPHSが「M-stagemusic」を開始している。

また、2006年以降、着うたとは別の携帯電話向け音楽配信サービスも開始された。NTTドコモがNapsterジャパンと提携した音楽コンテンツ定額配信サービスの「うた・ホーダイ」と、auブランドを展開するKDDIおよび沖縄セルラー電話が立ち上げたLISMOである。(Napsterについては前出の通り2010年3月に終了済。)

デジタル・ダウンロード[編集]

デジタル・ダウンロード(別名、デジタル・シングル、ダウンロード・シングル、ダウンロード販売)は、音楽シングルにおける規格のひとつ。また、オンラインストアを通して利用・購入を行うことそれ自体も指す。デジタル・シングルやアルバムを販売しているオンラインミュージックストアには、iTunes Storee-onkyo musicmoraNapsterレコチョクなどが存在する。

日本では、iPodが多く普及していることから、世界的に見てもデジタル・ダウンロードでの販売量が多く、また同じく高い売り上げを記録している。ダウンロード・シングルとして、現在世界で最もダウンロードされた楽曲は、800万ダウンロードを記録した、宇多田ヒカルの「Flavor Of Life」(パソコンによる音楽配信と着うた着うたフルの累計。ギネス・ワールド・レコーズには、着うたフルで最もダウンロードされた楽曲である、青山テルマ feat.SoulJaの「そばにいるね」が、日本で最もダウンロードされた楽曲として認定されている)。

また、CD販売はせず、デジタル配信限定の楽曲は多数あるが、浜崎あゆみが「Together When...」を配信限定曲として発売した際、配信限定曲では異例の、ジャケットとPV製作、多数の音楽番組でのプロモーションを行った。

2006年の日本では、音楽配信による総売上金額がシングルCDを越えた[3]。なお、日本での音楽配信における件数ベースでの【シングルCD:着うた:着うたフル:インターネット配信】の比率は、2009年末時点でほぼ【1:3:3:1】と携帯電話での配信がインターネット配信を上回っていたが[4]スマートフォンが普及した2013年は着うた、着うたフルの売上件数が大幅に減少し、逆にスマートフォン含むインターネット(PC)配信の売上件数が前年同期比131%と大幅に増加したため、ほぼ【2:1:1:3】と、インターネット配信が業界をリードする傾向が鮮明となった[5]

日本ではオリコンチャートに代表される"CDの売上計数"が、音楽市場の代表指標として機能していたが、2007年から2010年にかけてシングルCDの売上が急減し、ミリオンセラーのほとんどは音楽フル配信から生まれるという逆転現象が見られ、CDのみの計数であるオリコンチャートが市場実勢を反映しにくい状況が続いた。

例:

  • 宇多田ヒカルPrisoner Of Love』(着うたフル100万DLだが、オリコン年間チャートでは95位)
  • GReeeeN愛唄』(着うたフル200万DL、PC50万DLだが、オリコン年間チャートでは24位)
  • 木村カエラButterfly』(着うたフル100万DL、PC50万DLだが、配信限定の為オリコンチャートに登場せず)
  • キマグレンLIFE』(着うたフル75万DL、PC25万DLで計100万DLだが、オリコン年間チャートでは117位)
  • KARAミスター』(着うたフル75万DL、PC50万DL、またカラオケでも大ヒットしたが、オリコン年間チャートでは67位)
  • ゴールデンボンバー女々しくて』(配信チャート、カラオケチャートで首位を独走するも、オリコン年間チャートでは100位圏外)

しかし、長年シングルCDチャートに重きを置いていた日本のテレビ局・ラジオ局では、上記のような配信中心のメガヒットについて認識が出来ず、年末年始のカウントダウン番組等でも音楽配信の売上はほとんど考慮されなかった。

2012年5月には動画共有サイトニコニコ動画が、投稿動画の音声部分を無料でダウンロードできるNicoSoundを開始。JASRACと包括契約を結び、JASRAC管理楽曲を演奏したり歌ったりしたものであればダウンロード可能となった。ニコニコ動画ではVOCALOIDを使ったオリジナル曲が数多く投稿されており、新たな音楽ダウンロードサービスとして注目を集めている。

世界的には、ダウンロード販売による売上は2012年がピークで、それ以降は下降しており、代わりに定額制音楽配信が伸びている[6][7]

定額制音楽配信[編集]

定額制音楽配信(ていがくせいおんがくはいしん、on-demand streaming music service)は、料金定額で自由に好きな楽曲を再生することが出来るサービス。ストリーミングを基本とするがオフラインでの再生用にキャッシュすることも可能であることが多い。楽曲を自分で選択する方法以外にも、チャンネルがありラジオのように自動で選曲を提供するサービスもある。

日本対応[編集]

以下は予定(計画)

  • AWA - エイベックス、サイバーエージェントによる提供。
  • LINE MUSIC - LINE、ソニー、エイベックスによる提供。

以下は有料ネットラジオ

以下は、動画(ライブビデオ)のみ。

海外のみ[編集]

en:Comparison of on-demand streaming music services も参照

以下はネットラジオ

終了[編集]

脚注[編集]

  1. 日本での一例として、ソニー・ミュージックエンタテインメント(SMEJ)傘下のレコード会社はアリオラジャパン(それも旧BMG JAPANに所属経験を持つアーティストのみ)、ソニー・ミュージックマーケティングに販売を委託している一部のレコード会社(例・アップフロントワークスのzetimaレーベル、およびランティスのGlory Heavenレーベル、タイトーZUNTATA RECORDSレーベル、日音のAnchor Recordsレーベル/Kisspoint Recordsレーベル等)を除いてmora(ソニー傘下のレーベルゲートが運営)には楽曲配信していたが、iTunes Storeには2012年11月7日まで楽曲配信していなかった。
  2. 国際レコード産業連盟の発表
  3. [1]
  4. (2010-04-05) pdfファイル「日本のレコード産業2010年度版」 2010-04-05 [ arch. ] 2010-04-05
  5. http://www.riaj.or.jp/data/download/2013.html
  6. アップルのiTunes、音楽ダウンロードの売上高が大幅減 - WSJ
  7. Digital Music Sales Decrease For First Time in 2013 | Billboard
  8. 邦楽も充実、月額980円で聴き放題の音楽配信サービス「ひかりTVミュージック」、レコチョク社との協業により提供開始 - 株式会社NTTぷらら|報道発表資料
  9. 報道発表資料 : 「dミュージック」に月額コースを追加 | お知らせ | NTTドコモ
  10. 定額制音楽配信サービス「Music Unlimited」、国内向け楽曲数2,500万曲以上を達成 | Music Unlimited | ソニー
  11. 「Music Unlimited」サービス終了のお知らせ | Music Unlimited | ソニー

関連項目[編集]